研究概要 |
本研究では、「血液脳関門(BBB)におけるヘミチャネル開口仮説」を実証し、脳梗塞急性期などの病態時における脳毛細血管内皮細胞のヘミチャネル開口抑制機構を解明することによって、BBBの機能破綻を回避する方法論を確立することを目的とした。ヒトin vitro BBBモデル細胞株(hCMEC/D3細胞)を用いて、細胞外カルシウム非存在条件でのヘミチャネル開口阻害活性を指標として、低分子量の臨床処方薬及び古典的ヘミチャネル阻害剤と構造が類似する内因性物質のスクリーニングを行った。その結果、イオンチャネルを作用標的とする複数の臨床処方薬及びステロイドホルモンを、ヘミチャネル開口活性を阻害する化合物として同定した。これらの化合物は、in vivo虚血動物モデルにおいて障害部位の縮小効果が報告されていることや、パネキシンヘミチャネルPx1/Px2遺伝子欠損マウスでは、虚血後の脳機能障害を軽減したことが報告された(Channels 6:453-456, 2012)ことから、脳保護効果の分子機構の一つとしてBBBヘミチャネルの開口阻害が有効であることが支持された。さらに、hCMEC/D3細胞や他臓器に発現する各ヘミチャネル分子の開口阻害抑制機構を解明するため、HEK293安定発現株を構築した。各ヘミチャネル分子の単独発現株では蛍光基質プローブの透過が検出されないことが示され、開口刺激スイッチの共発現によってはじめて、ヘミチャネルを介した物質透過の制御機構が解明された。本研究成果から、急性の虚血性脳障害に対する脳保護戦略の一つとして、BBBのヘミチャネル開口活性の阻害機構が提示された。
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