蛋白質リン酸化酵素Nemo-like kinase (NLK)は、様々な転写因子をリン酸化することにより、その活性を制御する能力を持っている。しかしながら、NLKの活性制御機構はほとんどわかっていない。私たちは今回、NLKのホモ二量体形成がNLKの活性化とNLKの核局在に必須であることを発見した。私たちはまず、生化学的解析により、NLKがホモダイマーを形成し、自身のThr-286をトランス自己リン酸化することを見いだした。さらに、この自己リン酸化がNLKの活性化に必須であることを発見した。また、線虫C.elegansにおけるNLKのホモログlit-1の機能欠損変異に相当する部位であるCys-425に変異を導入したNLKはホモダイマーを形成できないだけでなく、酵素活性も核への局在活性も失っていた。これに対して、既知のNLK活性化因子である神経成長因子NGFによって細胞を刺激すると、細胞内在性のNLKがダイマー形成し、Thr-286の自己リン酸化を行なうことがわかった。加えて、NLKのダイマー形成と自己リン酸化がNGF刺激によって誘導されるPC12細胞の神経突起伸長に必須であることがわかった。これらの結果から、NLKのダイマー形成がNLKの機能的活性化の「最初のカギ」となることが示唆された。このように全く未解明であったNLKの活性制御メカニズムの中核部分を解明することに成功した。本成果は米国細胞生物学会誌Molecular Biology of the Cellにおいて発表した。 また、神経前駆細胞においてNLKがWntシグナルの転写因子Lef1をリン酸化することでLef1の転写活性を促進することをみいだしており、本成果についての論文を現在作成中である。
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