研究概要 |
平成23年度の研究で、マイクロアレイによる染色体構造異常のスクリーニングを50症例で行い、正常検体のコピー数多型データベースに登録のないコピー数異常を9名に同定した。1例は、CDKL5遺伝子のde novoの欠失例であり、詳細な臨床所見と併せて報告した(Saitsu et al.,Brain Dev 2012)。現在、残りのコピー数異常についてご両親検体を依頼し、de novo確認を急いでいる。また、de novoの均衡型転座の2例につて、塩基レベルでの詳細な切断点解析を行った。1例は、軸索ガイダンスに働くSRGAP2遺伝子の断裂であり、患児のてんかんの原因となっていることが推測された(Saitsu et al.,Am J Med Genet 2011)、もう1例は既知のてんかん原因遺伝子であるMEF2Cの上流121.5-kbに切断点があり、MEF2C発現調節の異常をもたらすことでてんかんの原因となったことが示唆された(Saitsu et al.,Am J Med Genet 2011)。また、我々が髄鞘化遅延と脳の広範な形成不全を伴うWest症候群の原因遺伝子として報告したSPTAN1遺伝子の変異スクリーニングを、各国の研究者と協力して行った。その結果、これまでに新たに4例の新規変異症例が同定された。2例で見つかった変異については、マウス神経細胞での発現実験を行い、α/βspectrin heterodimerの凝集を引き起こすことが観察された。また、変異の種類も1例を除いてin-frameの欠失あるいは挿入であり、我々の報告した2例と併せて考えると、dominant negative効果を持つ変異によって、髄鞘化遅延と脳の広範な形成不全(とくに小脳・橋の低形成)が引き起こされると考えられた(Hamdan and Saitsu et al.,Eur J Hum Genet 2011;Writzl et al.,Epilepsia 2012)。
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