1)初産妊娠率・出産率低下における酸化ストレス影響の解明において、ミトコンドリア酸化ストレス障害は排卵数の低下・精子運動能の低下・血小板増加を伴う不育症・習慣性流産を引き起こすことを明らかにした。本成果によりTet-mev-1マウスの晩発モデル動物としての可能性を示した。2)低出生体重児成人後の糖尿病・動脈硬化症発症メカニズムの解析において、ヒトと同様に、低出生体重仔として産まれたTet-mev-1マウスの壮年期において、解離性大動脈瘤および膵臓・肝臓での炎症像を確認した。このことから、成獣後に生活習慣病(糖尿病や動脈硬化症など)を発症していることが示唆された。3)学習記憶能力およびNeurogenesisの変化に伴う神経変性疾患発症メカニズムの解明において、Tet-mev-1マウスでの脳海馬領域においてミトコンドリア活性酸素発生量の増加を確認し、海馬依存的な学習記憶能力が若齢期において亢進し、壮齢期では低下していることを明らかにした。この成果は、ミトコンドリア活性酸素が負の要因ばかりでなく、正の要因として働くことを動物個体レベルで世界に先駆けて明らかにするものである。4)ミトコンドリア活性酸素の細胞内シグナル伝達への作用機序とその影響の解析において、Tet-mev-1マウスで過剰発現していたA-Raf蛋白質の機能解析を行った。A-Rafは、神経分化刺激後にミトコンドリアへと移行し、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)の活性中心PDHBサブユニットと結合することを明らかにした。この成果は、A-Rafが、神経分化に必要なエネルギー代謝を制御し、ミトコンドリアから一過的で爆発的な活性酸素シグナルを生じさせる新規因子であることを示唆する世界初のものとなった。
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