研究課題/領域番号 |
22689012
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
石井 恭正 東海大学, 医学部, 助教 (20548680)
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キーワード | ミトコンドリア / 活性酸素 / 不妊 / 生活習慣病 / 神経変性疾患 / 学習・記憶 / シグナル伝達 / マウス |
研究概要 |
1、初産妊娠率・出産率低下における酸化ストレス影響の解明において、ミトコンドリア酸化ストレスを負荷したTet-mev-1マウスで脾臓重量の増加、末梢血中好中球率の増加、胎盤でのIL-8の増加・Flt-1の減少を確認し、ミトコンドリア酸化ストレス増加と炎症の慢性化との相関が明らかにされ、不育症・習慣性流産の解明の一端を担う成果が得られた。現在、論文を執筆中である。2、低出生体重児成人後の糖尿病・動脈硬化症発症メカニズムの解析において、ミトコンドリア酸化ストレスを負荷したTet-mev-1マウスで空腹時を含めた慢性的な持続性高血糖が確認された。現在、ミトコンドリア酸化ストレスと持続性高血糖と細動脈硬化症との相関を確認するための実験を行っている。3、学習記憶能力およびNeurogenesisの変化に伴う神経変性疾患発症メカニズムの解明において、脳海馬組織切片培養での蛍光化学標識解析を行った結果、壮年期のTet-mev-1マウスの神経細胞特異的にミトコンドリアO_2^<・->の発生量と蓄積量の増加が確認された。一方、若齢期のTet-mev-1マウスでは発生量のみで増加が確認され、学習記憶能力の向上に寄与していることが示唆された。さらに、その他のROS産生は、神経細胞以外のグリア細胞において確認され、コントロールマウスと比較して、若齢期のTet-mev-1マウスではその蓄積量は少なく、壮年期において増加していることが確認された。現在、レドックスシグナルの関与を解析している。4、ミトコンドリア活性酸素の細胞内シグナル伝達への作用機序とその影響の解析において、ストレス応答性MAPKシグナル伝達系タンパク質の活性変化を確認したところ、phopho-JNK1,2/3存在量は壮年期のTet-mev-1マウスで増加し、一方、phosbho-p38存在量は若齢期のTet-mev-1マウスで低下していることが確認され、逆相関的に学習記憶能力に寄与していることが示唆された。また、壮年期のTet-mev-1マウスでは、ピルビン酸脱水素酵素を活性化するA-RAF存在量が増加しており、脳内グリア環境の悪化に伴うエネルギー代謝異常を補う変化が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3月11日の東日本大震災、及びその後の計画停電の影響により、標準マウスより神経質で繁殖の難しい当該モデルマウスは、4月から10月までの約半年間に新規マウス個体の取得が滞り、その飼育・繁殖改善のために苦慮した。その中、本年度は過去の凍結サンプルを多数利用して計画通りの実験遂行に尽力し、おおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
前述した通り、東日本大震災の影響により昨年4月から10月までの期間において、新規マウスの取得が十分に行えなかった。このため、新年度の実験において壮年期(老齢期)マウスサンプルの用意が危ぶまれる可能性がある。本年度で凍結サンプルを使い切ってしまっているために、従来の研究計画通りの実施を心掛け、今後のサンプル使用を十分に再検討する予定でいる。
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