研究課題/領域番号 |
22689012
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
石井 恭正 東海大学, 医学部, 講師 (20548680)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 活性酸素 / 習慣流産 / 生活習慣病 / 神経変性疾患 / 学習記憶 / シグナル伝達 / マウス |
研究概要 |
当該年度では、 1)初産妊娠率・出産率低下における酸化ストレス影響の解明において、母体での血小板増加と脾臓重量の増加、胎盤でのFlt-1タンパク質減少による血液血管異常が酸化ストレスを起因とする習慣性流産の原因であることを明らかにし、当該Tet-mev-1マウスが習慣性流産モデルとして有用であることを示す成果を得た。今後の解析により、不育症・習慣性流産の分子機序を明らかにする成果が期待される。 2)低出生体重児成人後の糖尿病・動脈硬化症発症メカニズムの解析において、末梢血分析の結果から、加齢依存的なリンパ球数の減少に伴う好中球率優位な炎症の慢性化が、持続性の低酸素環境を誘導し、空腹時を含めた慢性的な持続性高血糖を惹き起こしていることを示唆する成果を得た。今後の詳細な解析により、生活習慣病リスクファクター解明の一端を担う成果が得られると期待している。 3)学習記憶能力およびNeurogenesisの変化に伴う神経変性疾患発症メカニズムの解明において、アミロイドβの蓄積や神経細胞死、乳酸アシドーシスが確認されない壮年期のTet-mev-1マウスにおいて、ミトコンドリア酸化ストレスによるグリア環境の破綻が長期記憶形成異常を惹起していることを確認した。本成果により、ミトコンドリア酸化ストレスが加齢性記憶障害を惹起していることを示唆する成果を得た。今後、加齢性記憶障害の分子機序を明らかにする成果が期待される。 4)ミトコンドリア活性酸素の細胞内シグナル伝達への作用機序とその影響の解析において、脳海馬領域でのミトコンドリア酸化ストレスの発生はレドックスシグナルとCa2+シグナル伝達系の双方へ作用し、加齢依存的な学習記憶能力の変化に寄与することを明らかにした。今後の解析により、実験項目3)で得られている加齢性記憶障害の分子機序をより詳細に明らかにできると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験項目1)、3)、4)から不妊・習慣性流産および加齢性記憶障害に関わる研究成果が得られており、現在3報の学術論文構成が立ち、執筆を開始している。また、生活習慣病を対象とした実験項目2)から新たな知見が得られているため、本年度中にさらに1報の学術論文の執筆が可能と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
実験項目1)、3)、4)において得られている研究成果を基に、習慣性流産や加齢性記憶障害の予防・改善を目的とした応用研究への舵取りを目指し、これら表現型の根幹を明らかにするための分子標的研究を推進する。 また、実験項目2)において、酸化ストレスに起因する炎症の慢性化と生活習慣病リスクファクター出現のモデル化に成功したことから、今後、血管内皮細胞・血管平滑筋細胞・脂肪組織に焦点を当てた解析を実施し、細動脈硬化症などの血管疾患発症の機序解明を目指した研究を推進する。
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