研究概要 |
脂肪組織に存在するfat-associated lymphoid cluster(FALC)で見いだしたナチュラルヘルパー(Natural helper:NH)細胞はLineageマーカー(CD3,CD4,CD8α,CD11c,CD19,TCR6,TCRγδ,B220,NK1.1,Mac-1,Gr-1,FcεR1α)陰性でc-KitおよびSca-1を発現する自然免疫系のリンパ球である。これまでの研究からNH細胞は分化にIL7を必要とし、IL-2刺激によって増殖すること、またIL-2とIL-25の共刺激やIL33の単独刺激により多量のTh2サイトカイン(IL-5、IL-6、IL-13)産生をすることを明らかにしてきた。 IL-25やIL-33は寄生虫感染やアレルギーにおいて、肺や小腸で産生が見られるサイトカインとして知られていることから、肺におけるNH細胞の役割に着目した。その結果、定常時にFALCに存在するNH細胞は気管内にIL-33を投与することで肺に出現し、IL-5を産生することで好酸球浸潤を誘導した。寄生虫Nippostrongulus(N.b.)は、皮下から感染し血行性に肺へと移動し、気管支、食道を経て腸内に寄生する。N.b.は小腸においてIL-13の誘導した杯細胞過形成によって分泌されるムチンにより腸管外へ洗い流されるが、肺を通過する段階で起こる好酸球増多も亙ゑの制御に重要である事が知られる。実際にN.b.感染5日目の肺胞洗浄液にはNH細胞の浸潤が見られ、IL-5を産生することで好酸球を誘導し亙ゑの排除を行うことが明らかになった。 我々はすでに、NH細胞が小腸へと寄生したN.b.に対し、IL-13を産生することで小腸杯細胞過形成を誘導し、ムチンによる排除を行うことを明らかにしており、今回明らかになった肺でのNH細胞の排虫機構とあわせると、NH細胞は肺、小腸の2段階で寄生虫排除を積極的に行う細胞であることが明らかになった。
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