研究課題
骨髄における記憶ヘルパーT細胞と記憶プラズマ細胞との相互作用われわれは免疫記憶の中枢として働く記憶ヘルパーT細胞は二次リンパ器官において発生後8週間以内に骨髄へ移動し、その後何ヶ月も骨髄に定着し続けることを発見した。しかしながら、ヘルパーT細胞がどのような分子メカニズムで二次リンパ器官から骨髄へ移動するのか不明であった。そこで、記憶ヘルパーT細胞が骨髄中で休止状態にもかかわらず、活性化マーカーCD69分子を発現していることに注目し、当研究室で作製したCD69遺伝子欠損マウスを解析することで、エフェクターヘルパーT細胞が骨髄へ移動する際にCD69分子が重要な働きを持つことを明らかにした。CD69遺伝子欠損マウスでは免疫後の脾臓やリンパ節、末梢血でのエフェクターヘルパーT細胞の増殖・分化が正常であるにもかかわらず、骨髄の記憶ヘルパーT細胞のみを欠損することが明らかになった。さらにCD69特異的抗体による骨髄への移行能への効果を解析した結果、脾臓への移行には異常がなかったにもかかわらず、骨髄への移行には有意に異常が見られた。これらのことより、CD69は二次リンパ器官で活性化したヘルパーT細胞が骨髄に移動するためのホーミングレセプターとして働いていることが示唆された。CD69遺伝子欠損マウスの液性免疫反応を評価したところ、免疫早期の抗体価や脾臓におけるプラズマ細胞数には差がないにもかかわらず、高親和性抗体価や骨髄におけるプラズマ細胞数には著しい欠損が見られた。CD69遺伝子欠損マウスでは、濾胞ヘルパーT細胞や胚中心B細胞、胚中心の形成は正常に見られることより、今まで知られていない液性免疫における胚中心反応以降でのヘルパーT細胞の役割が明らかになったと考えている。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の研究を発展させた他細胞との相互作用の研究やCD69遺伝子欠損マウスの解析により、当初の計画ではなかった、骨髄記憶ヘルパーT細胞の役割という大きな課題を解決することができた。
骨髄記憶ヘルパーT細胞の役割を明らかにしたため、大きな研究軸を確立することが出来た。骨髄での新規に明らかになったT-B細胞相互作用をより明確にすることを目標に、当初の研究計画通り、研究を進めていきたい。
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