本研究は、長期療養施設における安全管理およびケアサービスの質評価について、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの3側面による検証を行い、今後の科学的かつ合理的な長期療養施設における医療・介護サービスについて検討するための基礎資料を得ることを目的としている。 初年度は、急性期医療、慢性期医療、在宅医療の各領域において、これまで開発されてきたQI指標をもとに、データの入手可能性、収集するデータの再現性や信頼性、指標の妥当性などの観点から本邦における長期療養施設への適応可能性について検討した。そして、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の審査承認後に、全国の長期療養施設(介護療養病床を有する医療施設、老人保健施設、特別養護老人ホーム)から無作為抽出した施設を対象に、過去1年間に提供されたケアサービスの実態についてストラクチャー(施設基準・組織体制、関連職種の人員配置など)、プロセス(転倒や褥瘡などのリスクアセスメント頻度、カンファレンス実施状況など)、アウトカム(転倒・転落、誤飲・誤嚥、ADLの低下、褥瘡の悪化、誤薬、経管栄養・留置カテーテル等のチューブトラブル、救急外来受診、急性期病院への転院など)の側面から調査を実施した。 今後は、実態調査をもとに有害事象(転倒・転落、誤薬、経管栄養・留置カテーテル等のトラブル、誤飲・誤嚥、褥瘡の悪化、ADL低下など)、救急外来受診(救急車利用)や急性期病院への再入院など、アウトカム発生に関連するリスク要因を解明し、長期療養施設における安全と質確保に向けたケアサービスのあり方について検討していく予定である。
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