高齢者や介護者の健康と近隣環境要因との関連を検討するため、平成23年度は、一般成人を対象としたソーシャル・キャピタル(社会関係資本)に関する意識調査を実施した。ソーシャル・キャピタルの項目は先行研究に従い、社会的つながり、互酬性、私的統制、地域活動参加ほか多面的な測定を試みた。 調査対象者は、高齢者調査や介護者調査の調査対象地域と同様、一都道府県内全自治体の20歳以上男女11447名を無作為抽出により選定した。郵送自記式質問紙調査を実施し、有効回収率43%を得た。ソーシャル・キャピタルの各変数と個人特性との関連を検討したところ、1)年齢が高くなるほど、互酬性に対する評価や地域内でのサポート・ネットワーク、活動参加頻度が高い傾向がみられた。逆に、現在住んでいる地域に居住し始めた時の年齢が高いほど、それらの変数の得点が低い傾向がみられた。2)次にソーシャル・キャピタルの各変数に自治体間で差異がみられるかどうかを検討したところ、社会的つながりや互酬性など、地域内の結びつきの強さを示す指標について自治体間差がみられる傾向にあった。3)高齢者への初回調査データから得られた、自治体ごとの健康度集計値と、一般成人調査で得られたソーシャル・キャピタルの各指標の自治体ごと集計値との相関関係を検討したところ、地域を良くするための活動参加者割合が高い地域ほど、高齢者の総合的移動能力や高次生活機能および孤独感が良好な傾向がみられた。また、互酬性の高い地域において高齢者の孤独感が低い傾向がみられた。 今後、地域力指標と既存統計から得られた他の近隣環境指標を、自治体単位や、学区などのより小地域を単位として集計し、高齢者や介護者個人の健康度との関連をマルチレベル分析により検討する予定である。
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