クローン病(Crohn's disease ; CD)は原因不明の慢性腸疾患であり、遺伝要因の強い多因子疾患である。欧米より報告された関連遺伝子の多くに人種差があるため、日本人検体を用いたクローン病の解明が必要である。我々は約55万SNPを用いた全ゲノム相関解析を行い、下記実施計画に基づき研究を遂行した。 a)別サンプル集団を用いた新規CD関連SNPの検証 新たな疾患関連候補領域を検証するため、国内の大学・医療機関と連携をとり、新たに約1000名のCD患者ゲノム検体・ジェノタイプ情報を得た。得られた結果を解析し、候補領域約70SNPより、新たなCD関連領域が1か所同定された。 b)関連領域周辺のSNP探索および高密度SNP地図の作成 a)にて同定した領域について、CD患者検体を用いたSNP探索を行った。得られたSNP情報をもとに、ゲノム検体をタイピングし、高密度SNP地図を作成した。その結果、スクリーニングで用いたSNPよりも強い相関を示すSNPが2カ所同定された。これらの関連SNPはCD病態に何らかの関与をしている可能性がある。 a)b)より、新たなCD関連領域を同定した。相関を示したSNP周辺には遺伝子が無く、関連領域とCD病態との関係は未解明である。今後、機能性SNPを同定し、関連領域がCDの病態にどのような影響を与えるのか、調べる予定である。 最後に、昨年末欧米人集団を用いたCDの大規模メタ解析により71カ所のCD関連領域が報告された(Franke et.al 2010)。しかし本領域は含まれておらず、日本人を含む東アジア人CD特異的な関連領域である可能性を示唆した。この結果は日本人CD患者を用いたGWASの必要性を再確認させるものであるといえる。今後も検体数を追加収集することで、より多くの関連領域を同定していく予定である。
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