iPS細胞は線維芽細胞にES細胞特異的な転写因子を導入し樹立されるES細胞類似多能性幹細胞である。iPS細胞から患者特異的心筋細胞を得るには、患者体細胞からiPS細胞を樹立・維持しながら心筋細胞を分化・選別していく。また心臓特異的転写因子を線維芽細胞に導入することで、直接心筋細胞の分化誘導が可能であると考えられている。様々な筋特異的転写因子をレトロウィルスにより線維芽細胞に遺伝子導入し心筋細胞分化を検討し心筋特異的遺伝子発現が線維芽細胞由来細胞において大きく上昇することを確認した。線維芽細胞から心筋細胞直接分化誘導方法を開発することで、容易かつ迅速に心筋細胞が高効率に得られ心筋再生医療へ応用されることが期待される。20種類の心臓で発現している転写因子及び転写補助因子をレトロウィルスベクターに組み込み、線維芽細胞へ遺伝子導入することにより心筋細胞分化を試みた結果、定量的RT-PCR法にて心筋特異的遺伝子の発現上昇が確認された。また転写因子以外の転写補助因子も用いていたが、これまでに用いた転写補助因子では心筋特異的遺伝子の発現に大きな変化を与えることはなかった。免疫染色を行うことにより、誘導された心筋細胞様細胞が心筋構造タンパクを発現して、形態的に心筋細胞に分化していることも確認された。今後は、心筋細胞分化誘導効率の上昇をめざし、さらに導入遺伝子を増やし検討していく。また分化誘導された心筋細胞の表現型を確認するために、電気生理学的検査等を行って検証していく。
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