神経疾患の治療や予防、或いは将来的な神経系の再生医療において、脳代謝の制御は重要な課題となる。昨今、脳の発生や再生、神経疾患の病態において、ケトン体が脳代謝の要として機能し、神経保護的に作用していることが示唆されている。他方、アストロサイトはケトン体代謝関連酵素を高率に発現し、in vitroにおいてケトン体を生合成することが示されている。本研究は、主にin vivoにおけるケトン体生合成を軸とした、脳総体におけるアストロサイトの機能的意義の解明を通じて、その医学的展開を目指すものである。平成22年度には、アストロサイトによるケトン体生合成をin vivoで評価する基盤となるモデルマウスを作出するべく、アストロサイト特異的にケトン体生合成を停止させたconditional KOマウスの作製を開始した。具体的には、ケトン体生合成において中心的な役割を担う、mitochondrial HMG-CoA synthase(HMGCS2)を標的とした、loxP-[HMGCS2]-loxPマウスの作製を行った(当初計画で同時に予定していたCPT-I遺伝子に対するマウス等は予算上断念し、本マウスに一本化した)。同マウスを、アストロサイト(GFAP発現細胞)特異的にCre recombinaseを発現する、GFAP-Creマウスを掛け合わせることで、アストロサイト特異的にHMGCS2をKOすることができ、即ち、アストロサイト由来のケトン体生合成を停止させたconditional KOマウスとなる。この掛け合わせのプロセス並びに解析は平成23年度に実施する予定である。
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