研究課題
前年度までにヒト化CCR4抗体(Mogamulizumab)投与を受けたATL患者でがん・精巣抗原、特にNY-ESO-1, MAGE family proteinに対する液性免疫反応を検出した。このことはATL腫瘍細胞に、がん・精巣抗原が発現していることを示唆する。実際にATL腫瘍細胞でのがん・精巣抗原の発現をRT-PCRで解析したところ、NY-ESO-1(61.4%)、MAGE-A3(31.6%)、MAGE-A4(61.4%)であり、このうちいずれかを発現しているATL患者は87.7%であった。がん・精巣抗原の血液腫瘍での発現報告は限られており、これまでにATLでの発現解析の報告はなかった。がん・精巣抗原はその名の通り、各種がんに選択的に発現しているため、欧米では各種の固形がんに対する免疫療法の標的抗原として臨床試験が進んでいる。そこで9名のATL患者においてNY-ESO-1特異的CD8およびCD4+T細胞の同定を試みた。CD8+T細胞誘導は、HLA/ペプチドテトラマー(テトラマーが使用可能なHLAを持っている患者)とNY-ESO-1抗原刺激に対する細胞内サイトカイン染色法により検討した。9症例中5症例でNY-ESO-1特異的CD8+T細胞応答が同定された。すなわちATL患者では、がん・精巣抗原に対する特異的CTLが、その発症や治療後寛解維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。ATLに対するMogamulizumab投与は直接的にCCR4陽性ATL細胞を殺傷するのみならず、CCR4陽性制御性T細胞を除去し抗腫瘍免疫を増強すると考えられる。Mogamulizumabを軸としたATLに対する新規包括的治療法の確立にあたり、HTLV-1関連抗原に対する特異的免疫応答に加え、上記がん・精巣抗原は有望な免疫療法の標的と結論した。
2: おおむね順調に進展している
ヒト化CCR4抗体(Mogamulizumab)を投与した患者で免疫モニタリングを実施する上で重要な抗原(がん・精巣抗原)を同定することができた。
2012年3月30日にMogamulizumabは「ポテリジオ麗点滴静注20mg」(以下「ポテリジオ[○!R]」)の商品名で国内医薬品製造販売承認を取得した。今後はより症例を増やし、より詳細にMogamulizumab投与前後での免疫学的モニタリングを実施し、Mogamulizumabを軸とした新規包括的治療法の確立を目指す。
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