研究課題/領域番号 |
22689030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 優 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任教授 (10324758)
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キーワード | 破骨細胞 / イメージング / 関節リウマチ / ケモカイン / 脂質メディエーター / 骨粗鬆症 / 細胞動態 |
研究概要 |
破骨細胞は単球・マクロファージ系の前駆細胞からできる多核巨細胞で、「骨を食食することに特化したマクロファージ」である。骨組織では常に、破骨細胞によって古い骨が壊されて、間葉系の骨芽細胞によって新しい骨が作られている。このバランスが崩れて骨吸収が亢進すると、骨粗鬆症や関節リウマチ、がんの骨破壊などの、いわゆる「骨吸収性疾患」の発症につながる。このため、破骨細胞の働きを抑えるような、ビスホスフォネート製剤などが骨吸収抑制剤として現在臨床応用されている。生体内で最も硬質の組織である骨を破壊・吸収することのできる唯一の細胞種である破骨細胞はこれまで重要な基礎的研究が数多くなされてきたが、破骨細胞のin vivoでの動態・機能については依然として謎が多い。これはこれまで、骨の中は硬い壁に囲まれた金庫のようなもので、破壊せずに内部を観察することが極めて困難であったためである。演者は最近、多光子励起顕微鏡を駆使した特殊な観察系を立ち上げることにより、骨組織・骨髄腔の内部を生きたままの状態で「非破壊検査」することに世界に先駆けて成功した、本研究ではこの実験系をさらに改良・発展させ、(1)破骨前駆細胞の骨髄内への遊走・接着の制御機構の解明、(2)成熟破骨細胞が骨吸収を行う作動様式の実体的な解明、(3)関節リウマチでの炎症性骨破壊を解析するための、炎症関節の生体イメージング系の開発を行うが、平成23年度までに、破骨前駆細胞のSIPによる両方向性移動制御や、RAN肌によるその遊走制御(現在論文準備中)や、生きた成熟破骨細胞のin vivoでの可視化(論文投稿中)などの重要な進歩が得られた。また、(3)の関節炎のイメージング系についても原型がほぼ完成し、平成24年度にこれを活用して炎症関節での破骨細胞作動様式について解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破骨前駆細胞の動態制御解明、成熟破骨細胞のin vivoでの可視化など、順調に進めることができている。関節炎のイメージング系については開発が遅れていたが、実験系の改良により原型がほぼ確立した。次年度にこれを活用することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
関節リウマチにおける破骨細胞動態、骨破壊のメカニズム解明とその制御が本研究の主眼であるため、次年度にはより炎症関節の可視化に注力し、これまで通常の骨髄イメージングで得られた知見を炎症性骨破壊の系において適用することを目指す。
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