研究概要 |
破骨細胞は単球系の前駆細胞から分化する,骨組織を破壊・吸収する特殊なマクロファージである.炎症や加齢に伴い,破骨細胞機能が相対的に亢進すると,骨粗鬆症や関節リウマチ,がんの骨破壊などの「骨吸収性疾患」の発症へとつながる.破骨細胞に関してはその分化誘導因子の同定や細胞内シグナルについて,これまで重要な基礎的研究が数多くなされてきたが,破骨細胞のin vivoでの動態・機能については依然として謎が多かった.本研究代表者は近年、多光子励起顕微鏡を用いた特殊な観察系を立ち上げることにより,骨組織・骨髄腔の内部を生きたままの状態で「非破壊検査」することに世界に先駆けて成功し,破骨細胞の生きた動態を解析することに成功した.本研究ではこれをさらに発展させ、破骨前駆細胞の骨髄内への遊走・接着の制御機構の解明・成熟破骨細胞が骨吸収を行う作動様式の実体的な解明・関節リウマチでの炎症性骨破壊を解析するための,炎症関節の生体イメージング系の開発を行ってきた.平成24年度には破骨前駆細胞のS1Pによる生体内遊走機構を特殊なイメージングツールを用いて実体的に証明した(Kotani et al, J Immunol, 2013)他,成熟破骨細胞の骨吸収機能をin vivoで解析することで,骨吸収機能をもった破骨細胞(破壊型:R型)と,そうでないもの(非破壊型:N型)に分類することに成功し,さらに炎症性Th17細胞がR型/N型の比率を変化させることで骨破壊を誘導することを生体骨内で証明した(Kikuta et al, J Clin Invest, 2013).さらには、骨吸収治療薬として臨床応用されている活性型ビタミンDが、S1Pによる制御点を調節することで薬効を発揮することを発見し(Kikuta et al, PNAS, 2013),本システムがヒトの骨疾患治療においても重要であることを示した.
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