研究課題
「研究概要と成果の内容」肺炎球菌は、市中肺炎及びインフルエンザ感染後の二次性細菌性肺炎の起炎菌として最も頻度が高い細菌である。これまでにマウスモデルを用いて、自然免疫に関与するNKT細胞が肺炎球菌の感染防御に関与することを明らかにした。本研究では、NKT細胞による肺炎球菌認識機構の解明を目標として、NKT細胞が認識する肺炎球菌由来の抗原の同定を試みた。1.NKT細胞が認識する肺炎球菌糖脂質抗原の同定肺炎球菌から精製した糖脂質が抗原提示分子のCD1dに結合すること、マウスのNKT細胞はその糖脂質を認識し、活性化することを明らかにした。糖脂質の構造解析にて、肺炎球菌糖脂質は我々の生体内にはほとんど存在しない特徴的な脂肪酸を有していることが分かった。このことから、NKT細胞は特徴的な構造を持つ細菌糖脂質をT細胞抗原受容体にて特異的に認識することが分かった。さらに、ヒトの末梢血より樹立したNKT細胞株を用いた解析より、マウスと同様にヒトのNKT細胞も肺炎球菌糖脂質を認識することが分かった。2.X線結晶構造解析による糖脂質の抗原提示分子CD1dへの結合様式の解明NKT細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞の細胞表面に発現するCD1d分子に結合した糖脂質抗原を認識する。X線結晶構造解析を行い、肺炎球菌糖脂質と抗原提示分子CD1dとの結合様式の特徴を分子レベルで解明した。「意義・重要性」NKT細胞は多様性に乏しいT細胞抗原受容体を発現していることから、特異的な外来性抗原を認識する役割を持っている可能性が示唆されていた。しかし、これまで詳細は明らかになっていなかった。本研究により、初めてNKT細胞が肺炎球菌という臨床上大変重要な病原微生物の菌体成分を認識することが明らかになった。このことは病原微生物に対するNKT細胞の役割の解明という点からも大変意義深いと考える。また、本研究は肺炎球菌に対する生体防御機構の解明につながる研究であり、大変重要であると思われる。
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