研究概要 |
平成22年度には、自閉症スペクロラム障害(ASD)・統合失調症・健常男女についての多くの脳形態所見やそのゲノム要因との関連について成果を報告した。 主なものは、海馬体積・扁桃体体積と過去に統合失調症との関連が報告されたNMDA 2Aサブユニットや(Inoue, Yamasue et al., Genes, Brain, and Behavior, 2010)、セロトニンや不安との関連が報告されたトリプトファン水酸化酵素(Inoue, Yamasue et al., Brain Research, 2010)、およびASDとの関連が報告されたオキシトシン受容体(Inoue, Yamasue et al., Biological Psychiatry, 2010)などの分子の遺伝子多型との関連を見出した。 また、ASD当事者と定型発達者を比較し、過去に対人相互作用や共感との関連が報告された後部下前頭回体積が当事者で有意に小さく、右半球の同部位の体積が小さいほど社会的コミュニケーションの障害が重度である事を報告した(Yamasaki, Yamasue et al., Biological Psychiatry, 2010)。更に類似の下前頭回の体積減少を統合失調症患者でも認めるものの、その体積減少は下前頭回の前部により顕著で、左半球の前部下前頭回体積が小さいほど妄想が重度である事を見出した(Suga, Yamasue et al., European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience, 2010)。 進行中の計画遂行状況としては、成人男性で高機能のASD当事者30名・統合失調症患者40名・健常男女60名について、臨床評価、心理検査、採血を実施し、更に3テスラMRスキャナーにてマルチモダリティMRI撮像(高解像度MRI、MR-Spectroscopy、拡散テンソル画像、fMRI)を行った。
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