研究課題/領域番号 |
22689034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山末 英典 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80436493)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 対人行動 / 統合失調症 / 自閉症 / 広汎性発達障害 / MRI / functional MRI / MR-spectroscopy / 中間表現型 |
研究概要 |
健常成人を対象にfMRIを用いた研究を行い、表情や声色を主に活用して他者の友好性を判断する場合には後方部の背内側前頭前野をハブとするネットワークが、言葉の内容を主に活用する場合では右半球の腹側の後部下前頭回をハブとする異なるネットワークが賦活されることを初めて示した。一方で、前方部の背内側前頭前野はこれらのネットワークを橋渡しし、どちらのハブ領域よりも早く賦活され、この部位がどちらかのネットワークを選択的に動員し、非言語的な情報と言語的な情報が食い違う際の複雑な他者判断を瞬時に効率よく成立させることが示唆された(SCAN, 2013)。一方で、自閉症スペクトラム障害当事者では、他者の友好性を判断する際に顔や声の表情を重視することが有意に少なく、その際に内側前頭前野の賦活が有意に弱いことが重要であることを初めて示した。さらにこの内側前頭前野の活動が減弱しているほど臨床的に観察されたコミュニケーションの障害が重いことを示した(PLoS ONE, 2012)。この内側前頭前野における代謝物濃度の違いを核磁気共鳴スペクとロスコピーを用いて比較したところ、当事者群では内側前頭前野のNアセチルアスパラギン酸の濃度が有意に高いことを認めた。そして、対照の定型発達の成人では認められる加齢に伴うNアセチルアスパラギン酸減少が、当事者では認められないことを初めて見い出した (Translational Psychiatry, 2012)。 また、幻覚や妄想等の症候学的類似などから統合失調症のモデルとして注目される覚醒剤精神病の患者を対象に、初めて全脳の画像統計解析を行なった。患者群では健常対照に比して、左半球シルビウス裂周辺の下前頭回や上側頭回の灰白質体積減少と、両側の前頭極皮質の体積減少、前頭眼窩部の白質体積減少を認めた(Schizophrenia Research, 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績欄に示した様に、平成24年度に英文論文として発表したものだけでも、対人行動の障害の中間表現型について、マルチモダリティMRI解析による多くの知見を追加した。これらの成果については、世界の研究者らと広く共有するための総説論文にまとめて発表するなどの試みを通じて、世界的な評価を高めて来ている(Yamasue et al., Journal of Neuroscience, 2012; Yamasue, Brain and Development, 2013)。そのため、当初の計画以上に進展して成果を挙げることが出来ていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに得た、ASD当事者・精神病超危険群・統合失調症患者・健常男女の臨床指標・マルチモダリティMRI画像データ・DNAサンプルデータなどの解析を進めて更に成果としてまとめていく。表現型・中間表現型・遺伝要因それぞれの解析だけでなく、相互の関連についての解析を行ない、知見を統合して対人行動の障害の神経基盤・ゲノム要因の解明を進めていく。
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