標的となるアミノ酸トランスポーターLAT1への親和性を考えて、α位にメチル基が導入されたαメチルフェニルアラニンの4位にBrを導入した76Br標識体、4-76Br-αメチル-Phe(4-76Br-AMP)を作製し、様々な検討を行ったところ、非標的臓器への滞留の問題が生じた。この滞留は高い脂溶性に起因すると考えて、αメチル基を水素に置換した4-76Br-Pheを作製し、同様に検討したところ、ある程度のクリアランス向上は認められたものの、まだ不十分であった。そこで4位の置換よりもクリアランスが早いとの報告がある2位を置換したPheのBr誘導体を検討するために、2-76Br-αメチル-Phe(2-76Br-AMP)を設計・合成した。2-76Br-AMPはマウスの体内分布実験において、血液からの速やかなクリアランスを示し、また担がんマウスを用いた検討では腫瘍へ高く集積した。この4位と2位にBrで導入したPhe誘導体の体内動態の相違を調べる目的で、血漿タンパクとの結合性および水オクタノール分配係数を検討したところ、2-76Br-AMPの方がタンパク結合率が低くまた水溶性が高いということが明らかになった。従って、2-76Br-AMPのクリアランスが4-76Br-AMPと比べて早い一因として、タンパク結合率の低さと水溶性の高さが関係していることが示唆された。また腫瘍細胞を用いた取り込み実験を行ったところ2-76Br-AMPはLAT-1特異的に腫瘍細胞に取り込まれる事が明らかとなった。 以上より、2-76Br-AMPは新規がん診断用アミノ酸誘導体であることが示された。
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