本研究の目的は、臨床応用が可能な、がん診断用PET薬剤として『76Br標識アミノ酸』を開発することである。標的分子としては、がん細胞において特異的に発現しているアミノ酸トランスポーター「LAT1」を選択し、LAT1への親和性を考えて、α位にメチル基が導入されたαメチルフェニルアラニンを母体化合物とした。昨年度までの検討によりαメチルフェニルアラニン側鎖の2位にBrを導入した76Br標識体、2-76Br-αメチル-Phe(2-76Br-AMP)が血液クリアランスが早く非標的臓器への集積が少ないということを明らかにした。2-76Br-AMPがLAT1特異的にがん細胞に集積するかどうかを検討する目的で、腫瘍細胞を用いた取り込み実験を行ったところ、2-76Br-AMPは腫瘍細胞に非常に高く取り込まれ、その取り込みはLAT1の阻害剤により低下した。このことから、2-76Br-AMPはLAT1に特異的なアミノ酸誘導体であることが明らかとなった。また担がんマウスを用いて腫瘍への集積性を検討したところ、血液から速やかに消失し、投与後早期から腫瘍へ高く集積した。また非標的臓器への集積は少なかった。同様に担がんマウスに2-76Br-AMPを投与し、動物用PET装置にて撮像を行ったところ、投与早期より腫瘍を明瞭に描出することに成功した。これらの担がんマウスによる検討結果は、現在臨床で用いられている18F標識αメチル-Tyrと比較して同等であったことから、2-76Br-AMPは、新規がん診断用アミノ酸誘導体として有用であると考えられる。
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