研究概要 |
痛み、特に慢性疼痛に対する遺伝子後修飾(Epigenetic)な変化をとらえるため、まず、BDNFという神経栄養因子に着目した。 オスのSDラットを用いて眼窩下神経絞扼モデルを作成し、その三叉神経節、さらに三叉神経脊髄鹵獲を含む頸部脊髄の取り出しを行い、RNA抽出、cDNA変換しサンプルをプールした。それらを用いてPCR法から標準スタンダード検出用のクローンの作製をBDNFの各種スプライスバリアント(I,IIa-c,III,IV,V,VI,VII,VIII,VIIII)各々に対して行った。それらのクローンをスタンダードにリアルタイムPCR法を用いて各種バリアントの定量を行った。その結果バリアントV,VIIIの発現が三叉神経節、脊髄でほとんど見られないことが明らかになった。 さらに、in silicoでBDNFゲノムの各種バリアントのプロモーター領域の場所の同定、さらに報告のないプロモーター領域に対しては予測プログラムによる予測を行った。また、BDNFゲノム中のCpGアイランドの同定を行い、プロモーター領域に一致したメチル化好発部位の予測を行った。これらのデータをもとに次世代シークエンサーSolidを用いてBDNF遺伝子のプロモーター領域のメチル化の網羅的解析を行う準備段階を行っている。 また、同じ部位のヒストン修飾による制御機構を解明するため、上記モデルの三叉神経節、脊髄からタンパクを抽出して、クロマチン免疫沈降による分析の系の確立にむけて実験を開始した。来年度からはV,VIIIを除いたバリアントのプロモーター領域のメチル化網羅的解析をめざす。さらにメチル化の変化が大きい部分に対するヒストン修飾の解析を行いそのメカニズムを明らかにしていく予定である。
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