研究概要 |
停留精巣に関する研究は、疫学・病態・環境要因など多岐に渡るが、臨床的に大きな問題となるのは、造精機能障害と悪性腫瘍化である。このうち、停留精巣における造精機能障害の原因として、温度環境など後天的要因の影響が大きいと考えられてきたが、私たちは精子幹細胞の機能異常、すなわち先天的要因が重要と考え、研究を行ってきた。 本研究では幹細胞であるA型精原細胞の分化に着目し、この過程に関わる遺伝子を同定解析するとともに、疾患との関連性を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、精子幹細胞の分離・培養を行うことを計画していたが、幼若ラット精巣を採取、白膜を除去、細胞を物理的および酵素処理によって分散して、初代培養することを行った。分散した細胞のうち、浮遊細胞のみを回収し、精子形成細胞の表面マーカーであるPlzf, c-Kit, Ngn3, Utf1などの遺伝子・タンパク質発現を確認した。また、胎児期に抗アンドロゲン剤であるflutamideを曝露された細胞では、Plzf・c-Kit遺伝子発現が有意に亢進していることを見いだした。 また、停留精巣ラットを正常ラットと比較し、精巣におけるmRNA とmicroRNA発現差をマイクロアレイ解析したところ、停留精巣では、ヒストンタンパクの脱メチル化酵素であるKdm5aが亢進し、miR-135aというマイクロRNAが低下していることを見いだした。さらにmiR-135aの標的遺伝子として、FoxO1遺伝子を同定し、精子幹細胞に局在していることを明らかにした。 精巣発生という観点からは、性分化疾患患者のゲノムDNA解析を行い、染色体が46,XXにもかかわらず精巣が発生する病態にROCK1遺伝子や、SOX3遺伝子が関与することを明らかにできた。
|