本研究の目的は、小児右心系補助循環装置として微細系の形状記憶合金線維(バイオメタル)と現在開発中のナノセンサ・マイクロ制御装置とを駆使して、必要な血液循環を力学的にサポートする超小型の埋込型小児用マイクロ人工心筋を開発することである。これは、心室壁もしくは下大静脈-肺静脈を接続する心外導管の外部に装着され、生体の血液循環系にとって"必要なときに必要なだけ"血液ポンプとして血液拍出を補助するもので、心臓の外面に設置されるため血栓の形成等の心配もない。本年度は、ナノテク形状記憶合金(バイオメタル:100MPaのオーダで10%程度収縮し、直径数マイクロメートルまで加工可能な線材)を基盤アクチュエータとする小児用右心血液補助人工心筋のプロトタイプ完成を目標とした。複雑な先天性心疾患に対する血行力学的補助のため、(a)心外導管を外部から蠕動的に収縮拡張させて肺循環をサポートする微小形状記憶合金アクチュエータ開発、(b)右心室ポーチを心室壁面上で収縮拡張させる超小型循環補助デバイス開発の2点の焦点を絞って研究開発を進めた。研究成果として、心外導管を収縮させる形態の循環補助デバイスによる収縮拡張により、Fontan循環を模擬した水力学的評価において、最大収縮期圧60mmHgを達成し、心外導管に対する拍動圧補助が可能であることが示された。また、小児Fontan循環シミュレーションモデルにおいて、心外導管収縮補助メカニズムにより管内流のForward flowが増大する効果が示された。
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