研究課題/領域番号 |
22689047
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白石 泰之 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (00329137)
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キーワード | 心不全 / 循環補助 / 先天性心疾患 / 人工心筋 / 形状記憶合金線維 |
研究概要 |
本研究の目的は、小児右心系補助循環装置として微細系の形状記憶合金線維(バイオメタル)と現在開発中のナノセンサ・マイクロ制御装置とを駆使して、必要な血液循環を力学的にサポートする超小型の埋込型小児用マイクロ人工心筋を開発することである。これは、心室壁もしくは下大静脈-肺静脈を接続する心外導管の外部に装着され、生体の血液循環系にとって"必要なときに必要なだけ"血液ポンプとして血液拍出を補助するもので、心臓の外面に設置されるため血栓の形成等の心配もない。昨年度までに、ナノテク形状記憶合金を基盤アクチュエータとする小児用右心血液補助人工心筋のプロトタイプ完成を目標とし、複雑な先天性心疾患に対する血行力学的補助のため、(a)心外導管を外部から蠕動的に収縮拡張させて肺循環をサポートする微小形状記憶合金アクチュエータ開発、(b)右心室ポーチを心室壁面上で収縮拡張させる超小型循環補助デバイス開発の2点の焦点を絞って研究開発を行った。本年度は、まず(a)心外導管型の完全埋め込み式循環補助装置の駆出支援効率の増大をはかり、Fontan循環シミュレーションモデルにおいて(1)心外導管の収縮拡張比、(2)心外導管への外部からの収縮力の検討を行った。それらの結果から、右心低圧系の循環においては、過大な収縮加圧により逆行性の流量が増大し、したがって壁面加圧力および壁面収縮変位に閾値があることが示された。また、(b)右室ポーチ補助人工心筋に関して動物実験により左室拡張障害なく選択的に右室側を収縮可能な構造を新たに考案し、有効な血行力学的効果が得られることが確かめられた。これらの成果は、形状記憶合金線維を応用した新たな小児用循環補助の方法論となり得ることを示しており、最終年度にさらに有効性を検証してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災後想定より実験環境復旧が遅れたため、開発した人工心筋システムの動物実験評価がマイルストンよりも遅れたが、年度後半までに、各種評価および新たな実験を集約的に再開でき、基礎開発部分の進展と、動物実験での埋め込み血行動態評価を行い、当初の目標値を達成した。この成果概要には記載していないが、健常成山羊を用いたFontan循環モデルによる肺循環評価を実施できる状況を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
Fontan循環モデルにおける基礎的検討から、低圧系における有効な循環補助のための高度な制御が必要となり得ることが明らかとなった。循環生理学的観点から肺循環に対する外部からの血行力学的サポートに関しては未だ有効な検証方法がなく、循環シミュレータおよび動物実験モデル(下大静脈-肺動脈吻合循環モデル)により開発した心外導管サポートシステムの循環動態評価を行ってゆく。これらの検討は研究当初予想された範囲内であり、各種センサを活用して完全埋め込み可能な微小アクチュエータを応用した右心系循環補助システム基盤を創成する。
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