研究課題
1.骨構成細胞分化を担うチロシンキナーゼの同定および機能解析破骨細胞分化過程において分化を制御するチロシンキナーゼを同定する目的で、破骨細胞前駆細胞を分化因子RANKLで刺激した細胞よりチロシンリン酸化タンパク質の精製を実施した。破骨細胞前駆細胞をRANKLで刺激した細胞抽出液より抗リン酸化チロシン抗体でリン酸化タンパク質を濃縮後、試料をSDS-PAGEにて分離、銀染色による検出を実施した。これと平行し、チロシンリン酸化タンパク質を網羅的に同定することが可能なLC-MS解析システムを立ち上げ、チロシンリン酸化タンパク質の網羅的な同定の基盤を構築した。また、破骨細胞分化を担うチロシンリン酸化経路に重要な役割を果たしている免疫受容体のひとつであるTREM2のノックアウトマウスの骨の解析を実施した結果、TREM2は破骨細胞分化を負に制御していること、またTREM2の下流でβCateninが重要であることを見出し、TREM2経路の重要性を示した。さらに破骨細胞が産生するSema4Dが、骨芽細胞分化に重要な因子であるinsulin receptor substrateのチロシンリン酸化を抑制することを見出し、チロシンリン酸化経路の骨芽細胞における制御機構の一端を発見した。2.破骨細胞におけるPI3K下流のプロテアーゼ細胞外分泌メカニズムの解明破骨細胞の骨吸収シグナルにおいてPI3K/Akt経路が必須であるため、Aktの標的分子の同定とその機能の解明を試みた。公共タンパク質データベース、破骨細胞分化過程における遺伝子発現情報などを基盤として破骨細胞で発現するAktの標的タンパク質を探索したところ、候補分子としてPlekhm1を抽出した。このタンパク質は破骨細胞の骨吸収に必須であることが知られており、その遺伝子変異はヒトやラットにおいて大理石骨病の原因遺伝子として知られている。In vitroにおける解析により、Plekhm1はAktによりリン酸化されることを見出し、そのリン酸化部位の特定にも成功した。この発見は大理石骨病の原因遺伝子の破骨細胞における機能解明につながることが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
骨構成細胞におけるチロシンリン酸化タンパク質の重要性および機能について明らかにし、論文として発表する事ができた。また、PI3K/Akt経路が機能不明だがヒト大理石骨病の原因となる因子のリン酸化に関与していることを明らかにできたことは、破骨細胞による骨吸収メカニズムのより深い理解につながることが期待される上に、新たな骨破壊性疾患の治療法につながることが期待される。
破骨細胞分化を制御するチロシンキナーゼの同定を手がかりとし、チロシンキナーゼ阻害剤による破骨細胞分化を標的とした骨破壊疾患に対する治療効果について検討を行う。現在、新規キナーゼ阻害剤の効果について解析中である。一方で、破骨細胞特異的にPI3Kを阻害し、骨吸収を抑制する手段について検討を行っている。ただし、PI3Kは多くの細胞で重要な役割を果たしていることを考えると、多くの副作用が生じる可能性が予想される。従って、PI3Kの下流において破骨細胞特異的な骨吸収シグナルを解明し、PI3Kによる骨吸収シグナルのみを標的とした治療法の確立も目指す。
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