研究課題
Runx1の変形性膝関節症のメカニズムに対する役割を検討するために、変形性膝関節症モデルマウスを作製し、マウス膝関節軟骨の組織的解析をおこなった。成体の軟骨特異的にRunx1を欠如させた変形性膝関節症モデルマウス(Col2CreER-Runx1)において、明らかに軟骨の変性と骨棘の過形成が起こることが判明した。免疫染色を用いた解析で、Runx1は正常関節軟骨の表層に発現しており、関節軟骨の保護作用を行っていることが示唆された。成体期の関節軟骨組織においても重要な転写因子であることが言える。Sox9-Runx1 ノックアウトマウスでは軟骨発生期におけるRUNX1の作用を、Col2-Runx1ノックアウトマウスでは軟骨初期分化におけるRUNX1の作用を検討した結果、いづれにおいても、野生型にくらべて、矮小型を呈するマウスであることが示され、軟骨発生期においても、Runx1が重要な役割を行っていることが示唆された。In vitroの実験では、Runx1の2型コラーゲンプロモーター結合領域の同定を行った。ルシフェラーゼアッセイ、クロマチン免疫沈降反応実験によって、2型コラーゲンの転写開始点より、約-300bpの領域で結合応答することが示唆された。さらにRunx1をアデノウイルスで過剰発現させた細胞では軟骨分化マーカーの発現上昇、軟骨基質合成の増加がみられるが、軟骨肥大分化マーカーの発現には関与しないことが明らかとなり、Runx1は軟骨分化を促進させるが、軟骨細胞の肥大化には関与しないことが示された。
2: おおむね順調に進展している
転写因子 Runt-related transcription factor 1 (RUNX1)による軟骨分化の初期から肥大化までの全段階の制御機構をin vitro, in vivo両面で詳細に解析することを目的とした課題であるが、本来の目的である発生期における軟骨分化メカニズムだけでなく、関節軟骨における正常軟骨組織の保護作用を行っていることをモデルマウスを用いて、検討した。
(1)RUNX1の標的分子の網羅的スクリーニングを行う予定である。未知なるRUNX1の標的分子を検索するため、マイクロアレイを行う。得られた候補分子について順次、軟骨分化のメカニズムを明らかにするための解析を進める。(2) RUNX1の上流シグナルのスクリーニングRUNX1自身を誘導するシグナル経路を検索するため、まずRUNX1のプロモーター領域の塩基配列を解析ソフトによって解析し、種間での保存領域の有無や既知の転写因子の結合モチーフの有無を検討する。高度に保存されている領域が存在する場合は、これを用いてサウスウェスタン法や酵母ワンハイブリッド法などを行い、その配列に結合する分子をスクリーニングする。
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