研究概要 |
平成24年度は,「需要と供給のグラフ分割の遷移可能性問題」及び「L(2,1)ラべリングの遷移可能性問題」について研究を進めた. グラフ彩色問題の遷移問題は近年急速に研究が進んでいる.L(2,1)ラベリングの遷移可能問題は,無線LANの周波数割当のメンテナンスなどに応用が見込まれる.本研究では,L(2,1)ラベリングに使用されるラベル数に基づき,計算困難性の解明を行った.その結果,たった7個のラベルに限定してもPSPACE困難であり,効率よく解けそうにないことを証明した.一方で,5個以下のラベル数であれば,どんなグラフに対しても線形時間で高速に解けることを示した.また,グラフ構造を限定した場合,遷移に十分なラベル数を与えることに成功した.これらの成果は,国際会議ISAAC 2012にて発表した. 一方,需要と供給のグラフ分割の遷移可能性問題は,電力系統の配電融通において,そのスイッチングをモデル化したものである.本問題に対しては,昨年度までに多項式時間近似スキーム(PTAS)と呼ばれる近似アルゴリズムの概略を与えていたが,本年度はその詳細な解析を行った.本アルゴリズムは,グラフ中の供給量の最大値に制限を与えることで構成されている.さらに本研究では,供給量の最大値に制限がない場合には,PTASが存在しそうにないことも証明しており,その意味で,近似困難性・容易性の詳細な解析を与えることに成功している.
|