研究概要 |
本研究では離散的な対象を扱う離散最適化(または組合せ最適化)を扱う.離散最適化において,連続の世界の凸関数と対応する概念として劣モジュラ関数がある.劣モジュラ性がn次元0-1ベクトル全体上の凸性がある意味で等価であることが知られている.劣モジュラ関数は凸性の文脈のみから重要というわけではない.応用数学の様々な場面で現れる基本関数であり,グラフ・ネットワーク理論,ゲーム理論,オークション理論,機械学習など多岐に渡る分野においてその重要性が認識されている.本研究では,離散凸性に基づいたアルゴリズムの理論研究とともに,多分野に渡り存在する劣モジュラ最適化およびその拡張の離散凸解析に関する応用研究に対して取り組んでいる. 劣モジュラ最適化の代表的な応用例としてクラスタリングがある.データ点集合[n]={1,2,…,n}が与えられたとき,それらをk個(k<n)のクラスタ(同種なデータの集まり)に分ける作業をクラスタリングとよぶ. 本研究では,外れ値への対策としてクラスタサイズのバランスを考慮に入れたクラスタリング問題に対し,その問題を劣モジュラ関数を用いた分数計画問題として定式化した.さらにこの問題に対する近似アルゴリズムを提案し,計算機実験的によい結果が得られることを示した.本結果は河原吉伸氏(阪大),岡本吉央氏(JAIST)との共同研究であり,学術論文として出版された. また,クラスタリングにおいて分割数kはあらかじめ決定していない場合も多い.本研究では劣モジュラ関数を用いて記述されるクラスタリング問題に対し,最適な分割数kの決定と最適な分割の決定を同時に行う問題を扱い,この問題に対するアルゴリズムを設計した.本成果は河原吉伸氏(阪大),岩田覚氏(京大)との共同研究であり,機械学習の世界最高レベルの国際会議NIPS2010に採択された.
|