研究概要 |
本研究課題は,木トランスデューサ(TT)の理論をXML文書などの構造化文書の変換に応用することを目標としている.しかし,XMLではノード間に参照関係を与えることも認めているため,循環構造や共有構造を定義することができ,TT理論の対象である木構造データよりも一般的なグラフ構造を扱う必要がある.特に循環構造をもつグラフ構造データを処理する場合,停止しない計算が簡単に記述できないように制御する必要がある.これは本研究課題が掲げる高信頼化を達成する上で解決すべき問題である. 平成22年度では,TDTTやMTTなどのTTにおいて基本的な概念となっている構造的再帰形式に着目した.構造的再帰形式は,再帰呼び出しのたびに必ず構造を消費するような形で計算が進められるため,グラフ構造データに対しても必ず停止する計算のみを表現することが可能になる.この結果自体は,既に提案されているグラフ構造変換言語UnCALにおいて実現されているものであるが,この言語モデルとTDTTには密接な関連があるため,TT理論を応用できるのではないかと考え,UnQLプログラムの検証に取り組んだ.ここでいう検証とは,「入力仕様を満たす入力に対する出力が必ず出力仕様を満たす」というTT理論で確立されている概念のことである.これをUnQLに応用することで,プログラムの高信頼化が実現される.今年度ではTDTTでの検証のような決定可能な手続きは発見できなかったが,その部分的な結果として「入力仕様を満たす入力に対する出力集合の見積もり」に成功した.これは,ビュー更新(双方向変換)とよばれる出力の変更を入力に反映する仕組みに直接応用可能である.この他,XMLの問合せ言語であるXQueryに対する効率化についても研究を行った.
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