本研究課題は,木トランスデューサの理論を XML 文書などの構造化文書の変換に応用することを目標としている. 従来の研究では,構造化文書変換プログラムを木トランスデューサとよばれる計算モデルで表現することにより,そのプログラムに対する最適化 (効率化) ・検証 (高信頼化) などの分野において多くの成果が得られていたが,実際の構造化文書変換プログラムは木トランスデューサのように理論的に洗練された形式とは大きな隔たりがあるため,実用的ではないと批判されていた. 本研究課題は,この理論と実用の隔たりを埋めることが目的であった. 最終年度である平成24年度においては,最も広く使われてる構造化文書変換言語の一つであるXQuery言語のプログラムに対して,木トランスデューサへ変換するアルゴリズムについて研究を進めた. これにより,XQuery言語で記述されたプログラムに対する最適化や検証する枠組みが自動的に得られることが保証される. ただし,最適化や検証の対象となっていた木トランスデューサの表現力の限界により,XQuery言語のプログラム全体をカバーすることはできなかったが,XPathとよばれるXQueryプログラム記述の核となる機構については広く対応しており,十分実用的であることを確認した. また,木トランスデューサ理論における最近の成果として,変換プログラムの出力を圧縮する方法が提案されており,これについても本研究で確立した手法が直接応用可能であることが期待される. さらに,平成24年度では,再帰的な木構造変換である木トランスデューサの拡張にあたるグラフ変換理論の応用についても研究を進めている.グラフ変換プログラムに対しても,構造化文書変換と同様に最適化と検証の両面に取り組み,この成果はモデル変換などのソフトウェア開発技術への応用も可能である.
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