研究概要 |
ネットワーク上での情報伝送における通信量を削減するため,各ノードで情報の加工を行うネットワーク符号化のアイデアは,送るべき情報が量子情報となると,量子情報の複製不可能性などの特有の性質がアイデアの直接的な適用を非常に困難にする.しかしながら,量子情報伝送のコストは古典情報に比して非常に高価な現状を鑑みると,ネットワーク符号のアイデアでネットワーク上での量子情報伝送を効率化することは,ある意味で古典のネットワーク符号以上に重要性のある課題であるといえる. 本年度はマルチキャスト型のネットワーク符号のアイデアを利用して,量子情報をネットワークの複数の受信者すべてで共有するプロトコルを提案した.このことにより,未知の量子情報を共有プロトコルの実行が完了した後で受信者を選択して送信する効率的な通信プロトコルが可能になった.本プロトコルが利用するマルチキャスト型のネットワーク符号は多項式時間アルゴリズムなど効率のよい符号化がすでに発見されていて,本プロトコルはそのような符号化すべてを利用することができるため,非常に幅広い適用範囲を持っている.ただし,マルチキャスト型でないネットワーク符号が利用できるかは今後の課題となっている. またや量子質問計算量や量子非対話型証明系などの通信を含む量計計算モデルについても研究を行い,それらのモデルにおける通信の効率化が可能な問題を発見した.
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