本年度は通信を含む量子計算モデル,とくに様々な種類の量子検証システムの計算量理論について,さらに研究を深化させることができた.具体的には,まず複数の互いに量子相関の全くない証明者から,指数的に短い量子状態を証明として受け取る場合における量子検証システムを対象にして,当該システムの検証成功確率について研究を推進した.その結果,「そのような量子検証システムの検証成功確率に関係するパラメータ付問題がNP完全問題である」という既存の計算量帰着に対して,既存のパラメータを改善するという成果を得ることができた.次に,単独の証明者から多項式長の古典状態を証明として受け取る場合における量子検証システムを対象にし,その成功率に関する改善について研究した.その結果,そのようなシステムは,検証すべき真偽問題の答えが真の場合には全くエラーを生じないようにシステムを変更できる,という事実を証明することができた.さらには,単独の証明者から多項式長の量子状態を証明として受け取る場合における量子検証システムについても,同様のシステム変更ができないのかを検討した.証明が量子状態の場合,古典状態にはない様々な問題が発生するために,証明が古典状態のときと同様のシステム変更が可能か否かは解決できていないが,部分的進展を与えることには成功した.つまり,証明者と検証者があらかじめ量子相関を持つことが許される状況を考えると,当該システムは証明が古典状態のときと同様のシステム変更が可能になることを示した.
|