研究概要 |
本年度は,交付申請書の「研究の目的」であげた三個の課題のうち,まず「有向木の詰め込みを基準とした根配置問題」の研究に取り組んだ.研究の進め方としては,大筋としては交付申請書の「研究実施計画」に記した計画に沿ったものとなっている.まず比較的近いと思われるグラフ上の連結度を基準とした供給点配置問題を参考とし,自然で応用的に有益なモデルを二つ提案することに成功した.一つ目の問題は,入力として有向グラフといくつかの被覆する集合が与えられているとき,この与えられた集合を被覆することのできる最小の重みの有向木の根を配置する問題である.二つ目の問題は,各点が被覆される需要数が与えられていて,各点を需要数以上被覆する最小重みの根を配置する問題である.これらの設定は非常に自然であり,有益な定式化を行うという当初の目的は果たすことができた.この二つの問題に対して,一般的には両方の問題ともNP困難であることを証明した.さらに肯定的な結果としては,前者の被覆する集合が与えられている問題に対しては,与えられている集合が凸であるならば多項式時間で解くことができることを明らかにした.このグラフの点集合上の凸性という概念は比較的最近提案されたものであり,この概念が非常に有益であることを示す結果ともなっている.また,この問題に対する多項式時間アルゴリズムはグラフの点集合上の凸性および有向木の詰め込みに関する深い知識を用いたものである.
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