研究概要 |
本年度は有向木の詰め込みに関する新たな問題である重み付きの有向木の詰め込み関する研究を行った.Edmondsによって証明された通常の有向木の詰め込みに関する定理を重み付きの設定に拡張すると以下のようになる.辺に重みが付けられた根rを持つ有向グラフにおいて最小重み全域有向木をk個詰め込むことのできる必要十分条件はなにか/Edmondsの重み無し版の最大最小定理を拡張すると以下のような予想が得られる.最小重み全域有向木をk個詰め込むことのできる必要十分条件は,最小重み全域有向木に含まれる辺によって構成される部分グラフにおける任意のr-カットのサイズがk以上である.この予想はEdmondsの定理と同様,必要性は明らかである.さらに,この二つの条件の間に位置する以下の条件との関係はどのようになるのであろうか.任意のk-1個の辺を取り除いても最小重み全域有向木の重みが変わらない.この予想は,有向木と非常に似た離散構造である最短s-tパスにおいては成り立つため,この予想が有向木に対して成り立つと予想するのは非常に自然である,しかし,本年度はこれらの予想が一般に成り立たないことを示し,さらに部分的に予想が成り立つことを証明した.この結果は,さらに他の研究者による,最小重み全域有向木族の最小サイズの横断を求める問題に対するアルゴリズムを喚起するといった,有向木の詰め込み問題に対する新たな展開を生み出すことに成功したといえる.さらに,本年度は重み付きの特殊な場合であるランク付きの有向森を求める問題の一般化であるランク付きマトロイド交差問題に対するDM分解を用いた,二部グラフに対する既存のアルゴリズムの拡張も行った.
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