初年度では、目的である「完全準同型ファンクショナル暗号」の構成に向けて、ベースになる理論を二つの結果で示した。一つ目の結果は研究実施計画の【B1】安全性の定義、モデル、および分析に関する研究である。主な成果は強い安全性をもつファンクショナル暗号方式を提案した。具体的には、楕円曲線上の「ペアリング」を用いて方式を設計し、強い安全性モデルであるAdaptive securityで安全性証明を考案した。この成果はPKC2010(International Conference on Public Key Cryptography)という国際学会で発表した。二つ目の結果は研究実施計画の【C1】実用性の高いファンクショナル暗号に関する研究である。成果の内容としてはファンクショナル暗号方式の一つの例である属性ベース暗号の効率の良い方式の構成法を提案した。この方式の特徴はファンクショナル暗号の高機能性を落とすことなく、方式の暗号文サイズが小さくすることが可能となった。これにより提案の暗号方式を効率よく実現することが可能となる。この結果はPKC2011という国際学会で発表した。その他に、研究実施計画の【Al】構成法のアプローチに関する研究について、楕円曲線上の「ペアリング」に基づく暗号方式を用いて、目的の性質である準同型性が得られやすい「格子」ベース暗号を構成するという計画であったが、この手法は理論的に困難であることが分かった。解決法としては、別の数学構想を用いることにするか、あるいは楕円曲線上の「ペアリング」のままで限定的な準同型ファンクショナル暗号を構成することである。これについては引き続き今年度で研究を行う予定である。
|