最終年度は、本研究の目的である完全準同型ファンクショナル暗号の構成、および安全なクラウドコンピューティングの構築に向けて研究を行った。昨年度まではファンクショナル暗号(関数型暗号)に関するサブ課題の研究を主に行ったのに対し、今年度は残りのサブ課題である準同型暗号について研究を主に行った。また、これまで安全なクラウドコンピューティングに向けて、情報の秘匿性を保証するための暗号プロトコルを設計したが、今年度はもう一つの重要な安全性要素である情報の真正性を保証するためのプロトコルの設計も行った。いわば、クラウドコンピューティングに適用可能な高機能電子署名を構築した。研究の成果は二本の論文で発表した。一つ目の成果は研究実施計画の【A2】アルゴリズムの構成法と【B2】安全性モデルおよび分析に関する研究である。主な成果は、広いクラスの高機能電子署名を統一し取り扱い可能な準同型電子署名の構成法の提案である。この構成法は完全コンテクスト秘匿性と偽造不可能(真正性)という安全性を持つであることを標準的なセキュリティモデルで理論的に証明した。この成果はASIACRYPT2012という権威のある国際暗号研究学会(IACR)が主催するトップ国際会議で発表した。二つ目の成果は研究実施計画の【C2】実用性の高い方式に関する研究である。主な成果はより効率の良い準同型電子署名の構成法である。この成果はPKC2013という国際会議で発表した。こちらも国際暗号研究学会が主催するトップレベル会議である。
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