研究概要 |
平成23年度は主に以下の研究を行った. 1並行実時間ごみ集めの研究 マルチコアを有効に利用するためには,ごみ集めを行う独立したスレッドを用意し,アプリケーションプログラムのスレッド(以下,アプリケーションスレッドと呼ぶ)の実行と並行してごみ集めを行う「並行ごみ集め」が有効である.並行ごみ集めでは,アプリケーションスレッドとごみ集めのスレッドの同期が必要になるが,この同期のコストをいかに軽減するかが課題となっている.既存の並行ごみ集めでは,細粒度な同期が必要な処理はアプリケーションスレッドを止めて実行することで同期のコストを抑えていた.そのため,実時間処理を行うアプリケーションには向かないものであった.本研究ではアプリケーションスレッドを止める必要のない,実時間ごみ集めアルゴリズムを改良して,実時間処理を行うアプリケーションに対応した並行ごみ集めを開発した. 2ごみ集めが使用するデータ構造を削減する研究 項目1の研究で用いたアルゴリズムは,アプリケーションプログラムが使っているデータ構造のポインタを実際にたどるため,非常に大きなワークリスト(まだたどっていないポインタを記録するデータ構造)が必要になる場合がある.本研究では,これを避けるために,小さなワークリストとワークリストから溢れたポインタが指す先のデータのおおまかなメモリアドレスを記録するデータ構造を使う手法を開発した. 3部分コンパクションの研究 コンパクションを行う領域を選ぶアルゴリズムを改良した. 4C++によるJava拡張プログラム中のバグを探す研究 Javaを拡張するC++プログラムは,ごみ集めに対応するための規則に従う必要がある.この規則に違反している箇所を探すプログラムを開発した.
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今後の研究の推進方策 |
予定していた,ネイティブコードへのコンパイルを行う高性能な処理系に,開発したごみ集めアルゴリズムを実装し,性能評価を行う. 消費電力の削減については,23年度に行った予備実験では,ごみ集めアルゴリズムによる消費電力の差は小さいという結果であった.24年度は実験に用いる機器を変更し,機器によらずに同じ結果となるかを確認する.
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