本研究は、インターネット上の多数のサイトを巻き込んでの大規模な通信障害の発生状況下においてもデータへのアクセス可能性をできるだけ維持することの出来るデータ保管庫(アーカイバルストレージ)の実現を目指している。データへのアクセス可能性を維持するためには、データの複製を作成し、それらを互いに距離の離れている複数サイトに分散配置することが重要である。本年度は以下の2点について研究を行った。1つは、実際のインターネットの状況に即してデータ複製の個数や配置を適切に決定するために、実際のインターネットで起きている通信障害の発生状況を過去に蓄積収集された経路制御情報から発見するための手法に関する研究である。その中でも本年度は、インターネットの各サイトの相互接続状況を複雑ネットワークとして捉え、グラフ理論における各種指標値の日々の変動状況を計算し、統計的外れ値検出を利用することで障害発生を発見する手法についての検討を行った。もう一つは、次年度に予定している実稼働システムの構築を見据えて、離れたサイト間におけるデータ転送速度の予測手法に関する研究を行った。その中でも本年度は、近年注目を集めているクラウドコンピューティング環境でしばしば用いられている仮想マシン共有環境がデータ転送速度の予測手法に与える悪影響の調査、ならびに、主成分分析を用いることでその悪影響の発生を効率的に予測・判断するための手法についての検討を行った。
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