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2011 年度 実績報告書

後戻りに基づく動的負荷分散による並列化技法の実用化

研究課題

研究課題/領域番号 22700030
研究機関京都大学

研究代表者

平石 拓  京都大学, 学術情報メディアセンター, 助教 (60528222)

キーワードハイパフォーマンス・コンピューティング / プログラミング言語 / 計算機システム / ソフトウェア開発効率化・安定化 / ネットワーク
研究概要

提案している要求駆動型負荷分散フレームワークTascellを用いたアプリケーション,特にN体問題のBarnes-Hutアルゴリズムの分散メモリ環境・共有メモリ環境双方での高速化を行った.まず,分散環境における高速化を実現するために,前年度に開発したTascellのブロードキャスト機能をMPIライブラリを用いて高速化した.この高速化版をBarnes-Hutアルゴリズムの実装に適用し,16ノード×4コアのクラスタ環境において,通信時間を70%,全体の実行時間を20%程度削減できることを確認した.また,共有メモリ環境における高速化のために,Barnesu-Hutアルゴリズムにおいて粒子の位置情報を管理するための「木」の構築の並列化を行った.複数のワーカが同時に木の同一箇所の書き換えを行うことを防ぐためにロックを利用すると,頻繁に起こるロック獲得のオーバーヘッドが大きくなるため十分な性能を得ることができない.そこで,書き込むアドレスが重複しないように担当する粒子の集合を分割する空間スティーリングと呼ぶタスク分割手法を提案・実装した.この実装の評価を,128ハードウェアスレッドを有するSPARCサーバ等で実施し,単純にロックを利用する方式と比較して2~4倍程度の性能向上が得られることを確認した.
広域分散環境における性能向上についても検討を行った.最大5クラスタをWAN上で接続した環境での性能評価により,ワークスティーリングの対象ノードの選択の偏りが性能低下の原因となることを確認した.次に,さらなる詳細な解析のためにTascellのシミュレータを実装し,その上での分析を行った.その結果,局所性を考慮したスティーリングと完全にランダムにワーカを選択するスティーリングを混合させることで性能を改善できるという予測が得られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたアプリケーションであるグラフ探索問題d-COPINEの開発がやや遅れているが,別のアプリケーションN体問題のBarnes-Hutアルゴリズムの共有・分散メモリ環境それぞれにおける高速化の実装を進めることができた.Tascellに追加したブロードキャスト機能はd-COPINEの分散環境向けの実装においても利用可能である.当初次年度以降の予定であった,広域分散環境における性能向上の検討も進めることができた.

今後の研究の推進方策

d-COPINEの実装を急ぐとともに,これまで開発を進めてきたN体問題の高速化についてもアルゴリズムの改良等,引続き開発を進める.広域分散環境においては,シミュレータを用いることにより詳細な性能分析が行えたため,この情報をもとにさらなる性能を得るための処理系の改良を行う.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Parallel Graph Traversals using Work-Stealing Frameworks for Many-core Platforms2012

    • 著者名/発表者名
      Masahiro YASUGI, Tasuku Hiraishi
    • 雑誌名

      Journal of Information Processing

      巻: Vol.20, No.1 ページ: 128-139

    • DOI

      DOI:10.2197/ipsjjip.vol.20.128

    • 査読あり
  • [雑誌論文] バックトラックに基づく動的負荷分散フレームワークTascell2011

    • 著者名/発表者名
      平石拓, 八杉昌宏
    • 雑誌名

      京都大学学術情報メディアセンター全国共同利用版広報

      巻: Vol.10,No.1 ページ: 32-42

  • [学会発表] 高速版Barnes-Hut多体シミュレーションの並列実装2012

    • 著者名/発表者名
      松井健, 平石拓, 八杉昌宏, 馬谷誠二
    • 学会等名
      先進的計算基盤システムシンポジウム(SACSIS2012)
    • 発表場所
      神戸国際会議場(発表確定)
    • 年月日
      2012-05-18
  • [学会発表] ジョブ並列スクリプト言語Xcryptの他言語対応に向けて2012

    • 著者名/発表者名
      上野優, 平石拓, 岩下武史, 中島浩
    • 学会等名
      日本ソフトウェア科学会プログラミング論研究会第14回プログラミングおよびプログラミング言語ワークショップ(PPL2012)カテゴリ3
    • 発表場所
      和歌山県白浜市
    • 年月日
      2012-03-09
  • [学会発表] Xcrypt : Highly Productive Job-Level Parallel Script Language2012

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Hiraishi
    • 学会等名
      International Workshop on Peta-Scale Computing Programming Environment, Languages and Tools (WPSE 2012)
    • 発表場所
      神戸市理化学研究所計算科学研究機構
    • 年月日
      2012-02-29
  • [学会発表] 安全な計算状態操作機構の実現と応用2011

    • 著者名/発表者名
      平石拓, 八杉昌宏
    • 学会等名
      自動チューニング研究会第3回自動チューニング技術の現状と応用に関するシンポジウム
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2011-12-05
  • [学会発表] エクサフロップス・コンピューティング実現に向けたシステム横断的課題に対する自動チューニング技術の貢献(パネリスト)2011

    • 著者名/発表者名
      平石拓
    • 学会等名
      自動チューニング研究会第3回自動チューニング技術の現状と応用に関するシンポジウム
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2011-12-05
  • [学会発表] ワークスティーリングフレームワークにおけるブロードキャスト機能2011

    • 著者名/発表者名
      松井 健,平石 拓,八杉 昌宏,馬谷 誠二,湯淺 太一
    • 学会等名
      並列/分散/協調処理に関するサマー・ワークショップ(SWoPP2011)
    • 発表場所
      かごしま県民交流センター
    • 年月日
      2011-07-29
  • [学会発表] 分散制約充足問題のジョブ並列による求解2011

    • 著者名/発表者名
      安部達也, 平石拓, 三宅洋平, 岩下武史, 中島浩
    • 学会等名
      並列/分散/協調処理に関するサマー・ワークショップ(SWoPP2011)
    • 発表場所
      かごしま県民交流センター
    • 年月日
      2011-07-29
  • [学会発表] 動的負荷分散フレームワークTascellの広域分散およびメニーコア環境における評価2011

    • 著者名/発表者名
      平石拓, 八杉昌宏, 馬谷誠二
    • 学会等名
      先進的計算基盤システムシンポジウム(SACSIS2011)
    • 発表場所
      秋葉原コンベンションホール
    • 年月日
      2011-05-25
  • [備考]

    • URL

      http://super.para.media.kyoto-u.ac.jp/tascell/

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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