最終年度である平成24年度には,オープンソースソフトウェアにおけるソースコードやリポジトリに対する分析を中心として,ソフトウェア品質の評価基準並びに予測法について研究を行った. まず,コードクローン検出技術を応用し,ソフトウェアの保守ではどういった規模のクローンに特に注意すべきかという課題の下,実際のコード修正事例に対する統計分析から60ないし100トークン程度のクローンが他のクローンと同時に変更されやすいという傾向をつかみ,その成果を学術論文としてまとめた.論文は電子情報通信学会英文論文誌Dに掲載された. 次に,コード中のコメント文に着目した研究も行った.コメント文はコードの読みやすさを助長するものとして認識されているが,その一方で,複雑で分かりにくいコードの可読性を調整する役目として書かれている場合もあるという指摘がある.本研究では昨年度からその指摘の妥当性をデータ解析によって徐々に明らかにしてきている.現時点では,ソフトウェアによってはコメント文の多いプログラムはコメントの無いプログラムに比べてバグの潜在リスクが数倍も高いという傾向も確認できている.まだ詳しいメカニズムを解明するには至っていないが,結果の新規性と有用性は学会においても高い評価を受けている.平成24年度にはこれに関する学術論文を2件の国際会議(いずれも査読付き)と2件の国内シンポジウム(いずれも査読付き),3件の研究会にて発表した.特に国際会議IWESEP2012ではBest Presentation Award にも選出された.また,本課題に関して前年度に発表していた論文に対し,情報処理学会からは山下記念研究賞も授与された. 以上のように,バグの早期検出や保守コストの増大を未然に防ぐための一定の技法を理論として一部創出できたことが平成24年の主な成果である.
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