研究概要 |
本年度の研究では,主に次の2点の成果を得た. まず,スケルトン並列プログラミングをより実用的な問題に適用していくための課題や問題点を把握するため,BiCGStab法と呼ばれる数値計算アルゴリズムに対して,SkeTo並列スケルトンライブラリを用いた開発を行った.この中で,対象アプリケーションが3次元シミュレーションを行うものであったことから,その処理が本質的にネストしたループによるものであった.この問題に対して並列スケルトンを適用する上で2つの方法で取り組み,それらの方法で得られたプログラムに対して,我々が開発してきた最適化機能[IFL 2009 selected paper]の適用可能性や,プログラム開発のしやすさなどの調査を行った.また,ここで得られた知見を国際ワークショップにて発表した. [HLPP2010] 次に,策定が目前にせまりコンパイラなどの対応の下準備の整ってきたC++Ox次期標準の機能が,スケルトン並列プログラミングにおいてどのくらい有効であるかの調査を行った.具体的には,無名関数(ラムダ式),autoによる型推論の2つの新機能について,それらを用いた並列スケルトンライブラリが実現できること,またそれによって,これまで記述できなかったようなプログラムの開発ができることが分かった.現在,これらの機能は,並列スケルトンライブラリ「助っ人」の実験的な機能として含められている.
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