研究概要 |
平成22年度には、単射関数に対するBennettのクリーンな可逆シミュレーションを、問題固有の知識を用いて最適化する手法を提案した。Bennettの方法は、一般の単射関数のクラスに適用が可能な汎用的手法であるものの、2つの順計算フェーズと2つの逆計算フェーズが必要であり、低効率の手法であった。われわれは、あるクラスの問題についてはBennettの方法の半分の計算フェーズで充分である手法を提案した。実用上の結果として,この可逆シミュレーションはBennettのシミュレーションより2倍高速に実行される。提案手法は、連長圧縮やrange codingなどの可逆圧縮解凍を実際に実施することでその効果を確認した。実装言語としては、われわれがセマンティクスを形式化した高級可逆言語Janusを選択し、一部のデータ構造を言語の可逆性を維持したまま拡張したものを用いた。さらに、range codingは圧縮モデルをテキスト生成フェーズの前後で保持することで最適化を行った。この成果は、これまでの可逆シミュレーションには見られなかったアプローチであり、効率的な可逆シミュレーションの開発を行うための新しいガイドラインのひとつとなることが期待される。これらの研究成果は、国際会議で発表した。論文中で示した可逆プログラムの実装例は、われわれのホームページにおいて公開をした。なお、これまで行ってきた可逆言語の研究について国際会議にて招待講演を行った。
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