研究概要 |
当該年度の研究実施計画に基づいて,これまでの研究について論文にまとめ,投稿した.また,そのときに得られたコメントを元に論文の修正を行った.前年度に作成したツールについて有効性を確認する実験を行った.実験には去年度までの実験で取得したデータを用いることで実験の準備時間を短縮した.実験の結果に基づいて,作成したツールの修正とアルゴリズムの変更を行い,効率的に正しい分析結果を出力していることを確認した.修正後のツールを用いて,ソースコードと設計書を対象としたレビュー実験を行い,被験者の視線移動と操作履歴を取得し,視線移動パターンとレビュー効率(単位時間あたりの不具合検出数)・効果(不具合検出割合)の関係について分析した.分析の結果,不具合検出効率の高い被験者について設計書やソースコードの各行を注視する時間が短く,同じ行やブロックに長時間とどまらない傾向が見られた.また,不具合検出効果の高い被験者について,レビュー対象文書以外の文書(設計書や仕様書)を注視する回数が多く,特定のブロック間を何度も繰り返し注視するパターンが見られた.これらの成果は,本研究の目的であった「短時間で多くの不具合を検出する読み方と,網羅的に検出できる読み方は異なるのか」に対する回答であり,レビュー支援ツールやレビュー手法の作成に用いることで,より効果的なソフトウェアレビューが可能になると思われる.特に,本研究で明らかになった視線移動のパターンを元に具体的なレビュー手順を指定したレビュー手法を作成することで,従来個人差が大きく開発者の能力に依存していたレビューの効率・効果を向上させることができると期待される.
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