研究概要 |
本研究では,トランジスタ等の非線形素子を多数含む回路を対象に,その過渡解析の高速化を目的として,これらの回路へのLeapfrog型アルゴリズムの適用を目指している. 平成23年度においては,信号配線だけでなく,電源・グラウンド分配系の新たなモデル化手法であるハイブリッドモデリング法を提案した.ハイブリッドモデリング法は,既存のモデル化手法であるMFDM(Multilayered Finite Difference Method)やLPM(Layer Partition Method)の欠点を相殺した手法である.具体的には,提案手法でモデル化した電源・グラウンド分配系の等価回路については,MFDMでモデル化したものと比較して,標準回路シミュレータSPICEでの解析コストを低減できることを示した.また,LPMでは多層レイヤを跨るような負荷接続のモデル化が困難であるのに対して,提案手法では問題なくモデル化できることを示した。さらに,提案手法でモデル化を行った電源・グラウンド分配系の等価回路については,ブロック型のLeapfrog型アルゴリズムにより高速に解くことが可能であることを示した. 結果として,従来型のMFDMでモデル化した等価回路と,提案手法でモデル化した等価回路の解析結果はよく一致し,提案手法の精度的な正当性を検証することが出来た.同時に,提案手法でモデル化した等価回路をSPICEとLeapfrog型シミュレータで解析したところ,Leapfrog型シミュレータはSPICEに比較して約3倍の高速化を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
信号配線だけでなく,電源・グラウンド分配系についてもモデリング手法及びシミュレーション手法の提案を行い,両者ともにLeapfrog型アルゴリズムを適用することで,高速な解析を達成している,
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したLeapfrog型回路シミュレーションアルゴリズムの並列化を検討する.アルゴリズム検証用プログラムを発展させた,並列化に対応したフルチップ解析用プロトタイプシミュレータの開発を行う,並列処理には,数百コアを有するGPUを用いる.GPUを用いたプログラム開発環境としては,NVidia社のCUDA環境を予定している.
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