研究概要 |
本研究では,効率の良いセキュアアグリゲーション方式として(a)差分チェックに基づくセキュアアグリゲーション方式,及び(b)認証セキュアアグリゲーション方式について,攻撃モデル・評価を含めてそれぞれ研究することを目的とする。 上記(a)に関して,差分チェックに基づくセキュアアグリゲーション方式の構築に関する研究を実施した.この方式の基本的なアイディアは,ノードXが集計を行うと同時に子ノードYのセンサデータをチェックできることであった.さらに,TESLA認証方式というハッシュ関数ベースの非常に効率的なブロードキャスト認証方式のアイディアを用いて,集計フェーズと確認フェーズを同時に行うことを可能とし,基地局と各センサ間の1回のアグリゲーションにかかる通信を従来の二往復から一往復に削減することに成功した.より具体的には,センサネットワークを木構造として階層化し各ノードが全て異なるMAC(メッセージ認証コード)の鍵を持つように設定する.そして,これらMAC鍵がTESLA認証方式で用いられるハッシュチェーンの各要素(ハッシュ値)に対応しており,これが集計を行うと同時にセンサデータをチェックできる仕組みである,各ノードは子ノードのセンサデータをチェックでき,かつ改ざんを行えないため,集計値の保証点が末端ノードから基地局まで一つずつ移動される.この研究成果は,1本の論文誌および1本の国際会議で発表された. 上記(b)に関して,メッセージ認証子(MAC)のアグリゲーション方式の構築に関して研究開発を実施し,強い仮定での基礎解析段階の研究成果は1本の国内会議で発表された.本研究では,アグリゲーション処理の一種であるネットワークコーディングを行う環境において,メッセージのアグリゲーションだけでなくMACのアグリゲーションを実現し,通信量/計算量の削減を目指すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では,効率の良いセキュアアグリゲーション方式として(a)差分チェックに基づくセキュアアグリゲーション方式,及び(b)認証セキュアアグリゲーション方式について,攻撃モデル・評価を含めてそれぞれ研究することを目的としている.(a)に関してはその集大成を論文誌でまとめ,(b)に関しては単純モデルにおける成果がすでに出ている.これらの成果により,研究の目的の達成度区分を(2)と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
「11.現在までの達成度」で述べたとおり本研究はおおむね順調である.そのため,研究の目的ですでに述べてある2つ目の研究について,より現実的なモデルを想定して研究を実施する.現在までの成果では,送信者のデータ毎にアグリゲーションを行う方式しか構築できていないため,効率性の観点で改良の余地がまだ十分にある.つまり,複数送信者が同時にデータを送信する場合,それらのデータを同時にアグリゲーションできない.そこで,本最終年度は,複数送信者が同時にデータを送信したとしても効率的にMACをアグリゲーションできる方式の構築に関する研究を推進する.
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