本研究では,効率の良いセキュアアグリゲーション方式として(a)差分チェックに基づくセキュアアグリゲーション方式,及び(b)認証セキュアアグリゲーション方式について,攻撃モデル・評価を含めてそれぞれ研究することを目的とする.上記(a)に関しては,すでに平成23年度に差分チェックに基づくセキュアアグリゲーション方式の構築に関する研究を実施し,この研究成果は,1本の論文誌および1本の国際会議で発表された.そこで,本年度の平成24年度は,上記(b)に関する研究を主に実施した. 上記(b)に関して,メッセージ認証子(MAC)のアグリゲーション方式の構築に関して研究開発を実施した.より具体的には,データ同士の演算が必要なデータ認証プロトコルが必要であるセンサネットワークやクラウドシステムを想定し,認証子同士の演算を可能にする準同型性を持つMACアグリゲーション(準同型MAC)を実現し,それを上記ネットワークシステムに適用した.ここでは,準同型認証子の構成法の一つであるCater-Wagman MAC(データを入力とした(準同型)ユニバーサルハッシュ関数の出力に擬似乱数を加算したもの)に焦点をあて,この方式を上記ネットワークシステムにうまく適用できるように方式を修正した.本研究成果は,2本の国際会議及び2本の国内会議で発表された. さらに,上記(b)の研究過程において「異なる秘密鍵で生成された準同型認証子同士を演算できない」という新たな課題が見つかった.上記(b)に関して,現実的で効率の良いデータ認証を実現するには,この課題を解決することが必要である.幸いにも,この課題は,平成25年度からの科学研究費助成事業の若手研究(B)「課題番号:25730083」に採録されており,上記(b)は今後の研究を発展させる重要な基礎研究であるといえる.
|