研究概要 |
近年,端末の低価格化・高性能化や無通信技術の発展にともない,ネットワークインフラが十分に整備されていない環境下においても通信の実現が求められている.このような環境は遅延耐性ネットワーク(DTN:Delay Tolerant Network)と呼ばれ,従来方式における各種前提が成り立たない.そこで本研究では,多くのネットワークシステムに不可欠な時刻同期の実現方式について検討した. 本年度は,主に基本方式の立案,理論的解析,シミュレーション評価に取り組んだ.DTNでは,他端末との通信頻度が極度に制限されており,移動端末が情報を中継するバケツリレー型の通信方式により任意の2端末間での通信が実現される.したがって,同一端末との継続的な通信や複数端末との同時通信,マルチホップ通信による情報の伝搬といった,通信インフラの整備されたネットワークでは容易に実現できる通信形態が必ずしも利用できない.そこで,2つの移動端末が遭遇した際に,互いの時刻情報を交換し,それらの平均値にそれぞれの時計を調整する,という非常に簡易ではあるが頑健な相対的時刻同期方式(基本方式と呼ぶ)を提案した. 基本方式を用いた場合に達成される同期の精度や同期達成に要する時間(収束時間)に関して数学的解析とシミュレーション評価の両面から調査した.その結果,同期精度は端末間の遭遇頻度とクロック速度差に,収束時間は端末間の遭遇頻度と初期のクロック差によって決まることを示した.
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