商業地域において,ユーザの位置情報などを用いたコンテキストアウェアなサービスの需要が大きくなっている.このとき,ユーザが自分の位置情報を完全にトレースされてしまうことはプライバシ的に問題があり,サービスのための積極的な情報提供がされない可能性がある.また,比較的小さな店からなるショッピングモールではコンテキストアウェアなサービスの提供基盤を店が自前で構築するのはコストが高すぎるため,モール全体で共有基盤を構築してサービスの提供を行うことが考えられるが,このサービスを自店の顧客統計データにもとに,条件を設定しながら行うような場合,共有基盤を通じて他店に顧客データが漏れてしまう可能性があり,こちらも積極的な利用がためらわれる原因となる.そこで本研究では,ユーザのコンテキスト情報,サービス提供者のサービス提供条件をそれぞれ外部に秘匿したまま,コンテキストに応じたサービスを提供できる基盤の設計を行っている. 本年度は,提案プロトコルの改良をすすめ,ユーザおよびサービスプロバイダの持つサービス情報(それぞれの位置,時間,行動コンテキスト情報)を秘匿しつつ共有する手法の検討を行った. また,ユーザのコンテキスト情報を秘匿したまま,各ユーザの行動における動線などの集積データをサービスプロバイダに提供する手法の提案を行った.
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