ユーザのクエリに応えてセンサデータを返す場合にまず着目すべき点はリアルタイム性とデータ処理のスケーラビリティである。センサデータは一般的に時間経過によって価値が急速に低下する傾向を持つため、イベント駆動型のデータ配信機構を用意しリアルタイム性を確保する方針を採用した。 一方でデータ配信時にユーザのクエリの偏りに寄ってデータ処理部分に負荷集中が生じ、システムが機能しなくなる可能性がある。この問題点を解決するためにデータ処理過程を動的に分割し、複数のノードで分割し処理を実行可能となるようデータ処理フォーマットを定義した。 本研究で設計したプロトタイプ実装を評価し、分割機構が負荷集中を抑え、複数ノードが協調してセンサデータの配送およびデータ処理可能であることを確認した。根本的なスケーラビリティに関する問題に取り組むため、位置情報を考慮したオーバーレイネットワーク上に本システムを組み込む研究開発も平行して行った。具体的には分散モバイルエージェント環境を提供するPIAX上で本設計を実装し、動作確認まで行った。 また、地理位置情報を考慮したオーバーレイネットワーク上でセンサデータを効率的に扱うデータ複製手法についても検討を重ね、エミュレーションによる評価を行った。 これらの成果によって、課題を達成するだけで無く、分散データ配信機構とP2Pネットワークの組み合わせが広域センサネットワークにおいて有効であることを示した。これらの成果は国際会議を中心に書籍等でも発表を行った。
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